2022/11/24
年金受給者が交通事故で死亡した場合の賠償金算定
交通事故によって被害者が死亡した場合、本来得られたであろう将来の収入についても損害の算定に含めます。これを「逸失利益」と言います。
ただ、「将来の収入」の何もかもが「逸失利益」として損害賠償の対象と認められるわけではなく、その収入の性質により左右されます。では「年金」についての逸失利益の算定はどのように行われるのでしょうか。
▶既に年金を受領している方が亡くなった場合
既に年金を受給している方が亡くなった場合、その年金の性質によって逸失利益算定の際の基礎収入に含まれるか否かが決まることになります。
年金には、全国民を対象とした基礎年金を定める国民年金と、その上に積み重ねられる被用者年金 (厚生年金保険法、 国家公務員共済組合法、地方公務員等共済組合法等)の2つがあります。各種年金において、①老齢年金、②障害年金、③遺族年金の各制度があります。
①老齢年金と②障害年金は、被害者が保険料を支払っており、家族のための生活保障的な性格を有するため、逸失利益算定の際の対象とすることができます。ただし、扶養家族の有無等によって支給される加給年金等は逸失利益算定の際の基礎収入から除かれます。
一方、③遺族年金は、受給者が保険料を負担しておらず、社会保障的な性格が強いため、逸失利益算定の際の基礎収入に含めることはできません。
▶まだ年金を受給していない方が亡くなった場合
まだ年金を受給していない方が亡くなった場合は、年金の性質に加えて、年金受給資格の有無(保険料の納付が完了しているか)や受給開始までの期間の長短等から、将来の年金受給の高い蓋然性が認められれば、年金を逸失利益算定の際の基礎収入に含めることができます。
仮に、年金を基礎収入に含めることができたときは、将来納付する予定であった保険料は控除されることになります。
▶年金が逸失利益算定の際の基礎収入に含まれる場合の算定方法
逸失利益の算定方法は、「コラム:死亡事故の逸失利益」にも記載していますが、
基礎収入額×(1-生活費控除率)×(就労・受給可能年数に対するライプニッツ係数)
という計算式で算出されます。
年金の場合は、逸失利益の算定において、稼働収入の逸失利益の算定の際と比較して、より高い生活費控除率が適用されるのが通常です。
また、遺族の方が、遺族年金の支給を受けていらっしゃる場合には、既受給部分および支給を受けることが確定した部分の遺族年金については逸失利益から控除することとなります。
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