2020/11/26
おけがの治療をしていると、加害者保険会社から、「そろそろ治療終了しませんか」と連絡があることがほとんどです。
今回は、加害者が負担すべき治療費について、被害者側が注意しておくべきことについてみていきましょう。
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1.治療費の賠償が認められる期間
交通事故によって入通院が必要となった場合、事故に遭わなければ治療費が発生することはなかったわけですから、これを加害者に請求することができます。こちらのコラムも併せてご参照ください。
ただし、賠償が認められるのは、原則として、症状固定まで、すなわち、治療を続けることで症状が改善される間の治療費に限られます。症状固定後の治療費が認められるのは、遷延性意識障害等、治療を続けなければ症状が悪化する場合で、その防止のために必要かつ相当な治療に限られます。
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2.治療費の支払
加害者が対人賠償保険に入っている場合、加害者保険会社が各医療機関に直接治療費を支払うことが一般的です。
もっとも、我が国では、一般的には、損害賠償を受ける時期は、損害賠償請求権の内容が確定した後、すなわち、発生した損害が確定した後になります。交通事故事件において、加害者保険会社が治療費を都度払いしてくれるのは、実は極めて例外的な対応なのです。
事故から一定期間が経つと、加害者保険会社から、そろそろ症状固定ではないですか?=治療終了じゃないですか?と連絡が来ます。こちらのコラムも併せてご参照ください。
症状固定したかどうかについては医師の診断が重視されますが、主治医が治療継続と言っており、また、交渉にもかかわらず、治療費の支払いをストップされることがあります。加害者保険会社の治療費支払いはあくまで任意のものですので、この場合、強制する手段はありません。ご自分の健康保険を使って治療を継続していただくことになります。後日、治療費支払いストップ後も症状固定していなかったことが立証できれば、症状固定までの治療費については、事後的に賠償を求めることができます。
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3.過失相殺がある場合
交通事故の発生について、双方に過失があると認められる場合、その過失割合に応じて、損害を分担することになります。例えば、こちらの過失が2割である場合は、相手方から賠償を受けることができるのは、発生した損害の8割にとどまります。これを、過失相殺といいます。
加害者保険会社が治療費を支払っている場合は、支払総額と過失相殺後の額との間に差が生じます。例えば、治療費が100万円で加害者保険会社がその全額を支払っている場合で、こちらの過失が2割だったとき、本来加害者が負担すべき金額は80万円ですから、加害者保険会社は20万円支払いすぎということになります。この支払いすぎた分については、最終的な賠償額の算定において差し引き計算されてしまいます。こちらの過失割合もそれなりに高い場合で相手方保険会社が治療費を支払っているときは、症状固定時期に注意しないと、最終的にお手元に残る金額が低くなることがあります。
なお、労災保険から治療費が支払われている場合には、費目を超えた清算は認められません。
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