2018/03/31
後遺障害等級14級9号と認定された方へ
■後遺障害等級14級9号とは
後遺障害等級14級9号は、「局部に神経症状を残すもの」と規定されており、当該神経症状について他覚所見はないものの、受傷時の状態や治療の経過などから連続性・一貫性が認められ説明可能な症状であり、単なる故意の誇張でないと医学的に推定されるものをいいます。
局部の神経症状に関するより重度の後遺障害としては、「局部に頑固な神経症状を残すもの」である12級13号があります。よって、後遺障害等級14級9号に認定された場合には、同じ局部の神経症状としてより重度の後遺障害である12級13号に該当するか否かを検討する必要があります。
■後遺障害14級9号と12級13号の違い
神経症状の後遺障害である12級13号は「障害の存在が医学的に証明できるもの」であり、14級9号は「障害の存在が医学的に説明可能なもの」と説明されます。ここで、12級13号における医学的に証明できるとは、他覚所見があるかどうかということになります。
「他覚所見」とは、X線、MRI等の画像所見にとどまらず、スパーリングテスト、ジャクソンテスト等の種々の検査を含めた神経学的検査所見を指します。例えば、スパーリング・テストとは、頸椎に対する検査であり、頭部と首を患側に傾けた状態で、頭頂から圧迫を加えます。神経根に圧迫性障害が存在するときは、患側上肢に放散痛や痺れ感が生じます。放散痛等が生じる場合は陽性(+)と診断されます。また、腰神経に対するテストとしては、ラセーグテストや、下肢伸展挙上テスト(SLRテスト)などがあります。
画像所見や神経学的検査所見の結果、発生する神経症状が医学的に証明できる場合は12級13号に認定される可能性がありますので、一旦なされた14級9号の後遺障害等級認定に対して、異議申立を行うことになります。
■ 異議申立とは
後遺障害等級認定は、損害保険料率算出機構が行います。後遺障害等級認定申請が行われた場合、最初の認定はおおむね損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所において行われますが、その認定に異議がある場合は、再度の審査を求めて異議申立を行うことができます。
異議申立を行った場合、より上部の審査機関において審査されることになりますから、一般に審査期間は長期化します。また、一旦なされた認定と異なる認定を求める訳ですから、適切な証拠に基づきポイントをついた主張を行う必要があります。
ですので、異議申立を行うか否かについては、検査結果等の資料を十分吟味すると共に、解決までの見通しを総合的に考慮する必要があり、経験ある弁護士のアドバイスは不可欠と思います。
■14級9号の被害者が適切な賠償金を得るためのポイント
・ 逸失利益
14級9号の場合、加害者側の提示してくる示談案は、逸失利益について労働能力喪失期間が2~3年と短く見積もられている場合があります。
しかしながら、労働能力喪失期間は後遺障害の具体的症状に応じて適宜判断される必要があります。裁判例においても、労働能力喪失期間を就労可能年限まで認めたものが複数あり、14級9号に該当するからと言って、当然に労働能力喪失期間が制限されることにはなりません。特に、症状固定後相当期間が経過しているのに症状の改善の兆候がない場合や、脳挫傷等脳に傷害を負ったことに伴う神経症状・脊髄損傷に伴う神経症状の場合や、自賠責の後遺障害等級に該当しないために神経症状としてとらえられるものの運動・機能障害が認められる場合には、労働能力喪失期間の判断は慎重になされる必要があります。
労働能力喪失率についても、多くは労働能力喪失率表記載の5%が認定されることとなりますが、例えば14級9号に該当する後遺障害が複数存在する場合などはその影響を加味する必要もあり、裁判例においても、14級の認定を受けた主婦について7%の喪失率を認めたケース、漁師について10%の喪失率を認めたケースなど、労働能力喪失率表を超える喪失率が認定されたものがあります。
・後遺障害慰謝料
14級9号の場合、後遺症慰謝料を自賠責基準の32万円のままで提示される場合もあります。
しかし、後遺症慰謝料についても、後遺障害として比較的軽微なものであるからといって制限を受ける理由はなく、14級の目安である110万円が認められるよう主張していく必要があります。
■まとめ
交通事故の被害に遭い、いわゆるムチウチとなる被害者の方は多くいらっしゃいます。多数の被害者がいらっしゃることで、交通事故の賠償実務において個別事情が見落とされがちです。また、異議申立を検討すべき事案も比較的多い等級であることから、その判断には多くの案件を扱った経験が必要です。14級9号と認定された場合は、弁護士法人アステル法律事務所にご相談の上、その後の手続をお進め下さい。→こちら