2018/03/08
後遺障害等級12級と認定された方へ
■ 後遺障害等級12級とは
12級は後遺障害等級表の下から3番目の等級であり、労働能力喪失率も14%ですので、後遺障害等級表では軽い方の後遺障害として定められていることになります。
しかし、12級の後遺障害によって、生活に著しい負担を抱える被害者の方も多数いらっしゃるのが現状です。すなわち、後遺障害等級表で下の方の等級だから、というだけで軽い後遺障害であると断ずることはできません。
後遺障害等級12級13号は、「局部に頑固な神経症状を残すもの」と規定されており、当該神経症状について障害の存在が医学的に証明できるものをいいます。
局部の神経症状に関する後遺障害としては、12級13号が最高位の後遺障害であり、局部の神経症状の程度が重いからといってより高位の等級認定を得ることはできません。
■後遺障害12級の被害者が適切な賠償金を得るためのポイント
遺障害12級13号と認定された方の賠償実務において、逸失利益及び慰謝料の算定について問題となることがよくあります。
・ 逸失利益
逸失利益は、基礎収入×労働能力喪失率×喪失期間に対応するライプニッツ係数によって算出されます。
①労働能力喪失率
後遺障害等級表において後遺障害12級は労働能力喪失率14パーセントと規定されており、実務上はこれに準拠して算出が行われます。
しかし、後遺障害等級表における労働能力喪失率はあくまでも損害算定のための参考資料に過ぎず、法規範ではありません。そのため、加害者は後遺障害等級表を下回る労働能力喪失率を主張してくることがあります。また、醜状障害を典型として、障害の内容によっては、後遺障害は発生しているが財産的損害は発生していないと主張してくる場合があります。
このように、後遺障害等級12級の認定を受けた被害者が適切な逸失利益の賠償を受けるためには、労働能力喪失率が正しく認定される必要があります。
②労働能力喪失期間
労働能力喪失期間は原則として、症状固定時を始期、就労可能年限である67歳を終期として認定されます。しかし、後遺障害等級12級の場合、症状の消退の蓋然性や被害者側の就労における慣れの事情等を考慮して、労働能力喪失期間を5~10年に制限して認定する裁判例がみられます。
しかし、労働能力喪失期間は後遺障害等級12級だからといって当然に制限されるべきものではなく、後遺障害の具体的症状に応じて適宜判断される必要があります。
・ 後遺障害慰謝料
後遺障害が発生したことによる慰謝料額には各等級に応じ一定の目安があり、後遺障害等級12級の場合は290万円です。
ところが、加害者側は、自賠責保険が後遺障害等級12級の慰謝料金額を93万円としていることから、自賠責保険と同程度のより低額な金額を提示してくることがあります。
そのため、後遺障害等級12級に認定された被害者が適切な賠償を受けるためには、慰謝料額にも注意を払う必要があります。
■ 後遺障害に応じたそれぞれの解決のポイント
・上肢・下肢の関節機能障害(12級6号、7号)
上肢・下肢に後遺障害等級12級に該当する関節機能障害が発生しているかは、被害者の身体の後遺障害が残っている側と残っていない側を比較して、その可動域が4分の3以下に制限されているかを基準として判断されます。
しかしながら可動域が4分の3以下に制限されている場合においても、かかる制限が事故によるものでないとして、非該当と認定されるケースがあります。
このような場合には、異議申し立てを行い、後遺障害との認定を獲得することが必要となります。
・頑固な神経症状(12級13号)
神経症状が12級に該当するか、14級に該当するかは他覚所見がある(障害の存在を医学的に証明できる)かどうかが一つの分岐点となります。ここで、他覚所見の有無は自賠責実務と裁判実務では認識に違いがあり、自賠責実務では14級又は等級非該当とされる事例でも、判決においては12級の認定を受ける例があります。
そのため、適切な賠償を受けるためには、症状に応じた認定を受けるため異議申し立てを行うことがまず必要であり、異議申し立てが棄却された場合においても、判決において適切な事実認定を受けるために活動していくことが必要となります。
また、神経症状の場合、加害者は労働能力喪失率や労働能力喪失期間を争ってくることが多く、裁判実務上も、労働能力喪失期間を制限(おおよそ5~10年)する場合が多いです。
しかしながら、労働能力喪失期間はそれぞれの症状等に応じて判断されるべきものですから、かかる制限が適切かどうかを法的に判断することが、賠償額算定にあたって不可欠といえます。
・ 外貌醜状(12級14号、15号)
外貌とは、頭部や顔面のように、上肢及び下肢以外の日常露出する部分を指し、原則として、醜状の大きさによって等級が定まります。
外貌醜状は容姿に関する障害ですから、通常の労働に関しては特段影響を及ぼさないとして、加害者が労働能力喪失率を低く、労働能力喪失期間を短く見積もるケースも多いです。
しかしながら外貌醜状が労働に影響するかどうかは被害者の職業、年齢、性別等も考慮したうえで判断されるべき問題であり、この点十分な主張を行うことが、適切な賠償を受けるためには不可欠といえます。
お困りの際は、弁護士法人アステル法律事務所へご相談ください。→こちら